恋の痛み

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  息を乱して走り、中庭に着いたものの、すぐには彼女の姿を見つけられなかった。 「脇腹、痛っ……」 本来頭脳派な俺に、全力疾走なんて柄じゃないのに。 息を荒くして、身体を屈めて、汗ばんで。 カッコ悪いけど、今の俺に形振り構っている暇はない。 決して狭くはない中庭を見渡して、もっと情報を詳しく聞き出すんだったと悔やむ。 一刻も早く、せめて一目だけでも、みちるちゃんに会いたい。 そう切実に思う俺は、完全に“みちる欠乏症”だ。 ……なんて、何を馬鹿なこと。 さすがに俺も気恥ずかしくなって自嘲しながら、当てもなく歩いて、彼女の姿を探し始めた。  
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