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「あ……」
振りかざされた手は、間一髪でみちるちゃんの前に飛び出した俺の頬を掠めた。
我に返った女の子は顔を青くしてよろめきながら、動揺を露にする。
まさか、俺が現れるとは夢にも思わなかったんだろう。
……あぁ、この子。
見覚えがある。
『好き』
『呼んでくれる?私の、名前……』
一方的に突き放した妖艶な三日月を思い出す。
「……わた、し……」
「あー、平気、平気!僕、オトコノコだから」
重く澱んだ空気を振り払おうと、ニカッと笑ってみせた。
「みちるちゃんも、大丈……ぶっ!?」
みちるちゃんを心配して振り返れば、次の瞬間、今度はバチンッといい音が響いた。
頬に思い切り何かがぶつかってきて、視界が微かに揺れる。
じわじわと広がる痺れたみたいな痛みを感じながら、その“何か”がみちるちゃんの手である事を理解した。
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