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「……今まで、楽しければいいやって、自分勝手にいい加減な事ばかりしてきた。皆の気持ちを無視して傷付けて、ごめんね。……ごめんなさい」
深く頭を下げれば、辺りはしんと静まり返った。
誰も、一言も発しなくて、重たい沈黙が俺を責める。
許しを乞うつもりはないけれど、こうして答えを待つ時間は痛くて苦しい。
あぁ、人を傷付けるってこんなにも胸が痛いんだ。
傷付けられた人は、これよりもっと痛いんだ。
そう思ったら、顔を上げる事なんて出来なかった。
「……もう、いい」
固く目を瞑り、その痛みを噛み締めている俺の元へ、そんな声が落ちた。
「女の子に叩かれたり、こんな風に頭下げたりして……カッコ悪い。そんな男、こっちから願い下げだわ」
続く言葉に顔を上げる。
そこには妖艶な三日月なんかなくて。
気丈に振る舞いながらも、唇を噛み締めて切なげに俺を見下ろす、小さな女の子だけが居た。
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