恋の痛み

34/45
前へ
/263ページ
次へ
「行きましょ」 渡瀬さんは表情を隠すように俯いて素早く体を翻すと、まだ戸惑っている他の女の子達をそう促す。 すると、女の子達は定まらない視線を時々こちらへ向けながら、おずおずと彼女の後に続いた。 小さくなっていくその後ろ姿を見送った後、崩れるようにその場にしゃがみこんだ。 今頃になって、再び頬が疼き出す。 「これは効いたなぁ……」 目が覚める一発だった。 みちるちゃんの言葉はまさしく正論で。 “楽しい”だけを追求していた俺は、いい加減以外の何者でもなかった。 答えられない想いを寄せられれば、突き放すのが優しさだって、そんなのただねじ伏せているだけ。 そんなことにも気付かないで、彼女たちを傷付けてきた。 「俺ってサイテー……」 自分が情けなくなって、空を見上げ、深い溜め息と共にそう漏らす。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14261人が本棚に入れています
本棚に追加