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「あら、気付けて良かったじゃない」
そんな声と共に突然、目の前に広がっていた空が遮られ、代わりに視界を埋めたのは俺を見下ろすみちるちゃんだった。
同時に、未だなお鈍く疼く頬にひやりと冷たい感覚。
「みちるちゃんっ!?」
だけどその正体を確かめるよりも先に、その姿が現実のものかを確かめたくて。
振り返り、慌ててその手を取った。
「ちょっ……!」
その勢いに驚いたみちるちゃんの小さな悲鳴と共に、頬にあった冷たさは消えて、ゴトッと地面に何かが落ちる音がした。
「……本物?」
「何よ、人を幽霊みたいに。あーあ、落ちちゃったじゃないの」
みちるちゃんは横目で俺を睨むと、さっきの音の正体を拾い上げた。
「はい」
そしてそれを少し乱暴に突き出したかと思うと、頬に押し付けた。
思わず肩を竦めてしまうような冷たさが、また舞い戻ってくる。
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