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「……赤くなってる」
控えめに、細くて白い指が頬に伸びる。
視界がみちるちゃんで満たされると、心臓は痛いくらい重く鼓動を打ち始めた。
抱き締めた事だってあるのに、あの時とは全然違う緊張感。
どうしてあの時、あんなにも簡単に触れられたんだろうって、自分で自分を不思議に思うくらい身動ぎ出来ない。
「痛い?」
口を開けば、地響きのような鼓動が飛び出しそうで。
口元を引き結び、ぶんぶんと勢いよく首を横に降った。
「……気付けた事に遅すぎたなんて、ないわ。それは確かに明日の右京を変えるものだもの」
俺を映すその目が優しく微笑んでいる事も、“右京”と名前を呼ばれた事も、心に染み入る温かい言葉も全部、俺の胸を熱くする。
体の底から、たぎるみたいに。
触れたい。
そう思って、先端だけがそっと触れている手を取る。
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