恋の痛み

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「伝えたの。宇佐美に、好きだって」 ドクン、と心臓が震える。 頭の中が真っ白になる俺に反して、俯いて表情を隠すみちるちゃんの頬は、うっすらと色付く。 ……聞きたくない。 その先に続く言葉を知るのが怖くて、耳を塞ぎたくなる。 ギュッと強く目を瞑った瞬間、タイミングを見計らったかのように予鈴が鳴った。 「あっ……と、チャイム!鳴ったし、行かなくちゃ。ねっ!?」 一方的に話を打ち切って、逃げるように立ち上がる。 とんだ臆病者だ。 「そういえば次、移動教室だったんだよね。急いで戻らないと。ごめん、またね」 みちるちゃんが話す隙を与えないように捲し立てて喋る卑怯な俺の体は、もう立ち去る準備万端だ。 こんなにも自分が情けない男だったなんて、知らなかった。  
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