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「……あ」
思わず「しまった」と、そんな言葉が口を衝いて出そうになる。
そこにいた人物に、後ろめたさを感じる理由なんて何処にもないのに。
「……最っ低」
見るもおぞましいとばかりに、いつも不機嫌そうな顔を更に不機嫌そうに歪めた“あの子”は、そう短く吐き捨てるように言って踵を返した。
「ちょっ……、待っ……!!」
彼女が関わると、何故か考えるより先に体が動いてしまう。
覆い被さる女の子の体の下からするりと抜け出し、追い掛けようと立ち上がったものの、向かう先とは逆方向に手を引かれ、呆気なくそれは阻まれてしまった。
「……どこ行く気?あの子、誰?」
「……知らない」
……そう、知らないんだ。
彼女の事など、一切。
名前すら、知らない。
思い知らされた現実に、何故か心臓がちくりと痛む。
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