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「そりゃ……そうでしょ?宇佐美もみちるちゃんの事、大事に思ってるみたいだったし……」
みちるちゃんを守るように俺の前に立ちはだかった宇佐美を思い出す。
―――『あんまりからかわないでやって下さい。こいつ、そういうの慣れてないんで』
穏やかな物言いではあったけど、あれは明らかな牽制だった。
思い起こすと同時に頭の中に立ち込める靄を、清吾の深い溜め息が割いた。
「憶測じゃなくて、本人の口から、はっきりした言葉で、ちゃんとそう聞いたの?」
まるで子供に言い聞かせるみたいに、短く切った言葉の語気をいちいち強めて尋ねてくる清吾。
責められているような錯覚さえ覚えて、肩を竦め、弱々しく首を横に振った。
「……聞くのが怖くなって、逃げてきた」
ぼそりとそう呟くと、清吾は当て付けのように盛大な溜め息を吐き出した。
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