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「清……」
「みちるが宇佐美に告白したって事はつまり、自分の気持ちに区切りをつけたってことなんだよ」
俺の呼び掛けを遮って言った清吾は、声色こそ落ち着いたものだったけれど、まるで食って掛かるようだった。
「……きっと、右京に打ち明けた事だって、簡単な決断じゃなかった筈だ。例えそんな事情は知らなかったにしても、どんな言葉が待っていようと、右京はちゃんと話を聞くべきだったんじゃないの。右京はそれを、身に染みてよく分かっている筈だろ。何かを打ち明けたり伝えるには、色んな葛藤や勇気が必要なんだって」
次々と清吾の口から放たれる言葉は、鋭い矢のように胸に突き刺さっていく。
だけど、胸を痛めている暇も、言い訳もない。
「右京はみちるから逃げたんだ」
作った拳に力を込め、悔しさを噛み締める俺に、清吾は重く響く声でとどめのひと言を投げつけた。
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