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確かに、そうだ。
俺は逃げた。
彼女の揺らぎない瞳から。
彼女は俺に向き合おうとしてくれたのに。
「……っ清吾!」
勢いよく清吾の肩を掴み掛かる。
清吾は迷惑そうに歪めた顔を後ろに引いて、「なに」と無愛想に答えた。
「みちるちゃんの家、どこっ!?」
俺がそう尋ねるのを見通していたのだろう。
清吾の、俺を見下ろす冷たい目は穏やかなものに変わり、笑みが宿った。
「今度こそ本当に振られるのに、いいの?」
清吾はすぐに挑発的な表情に切り替えると、試すように尋ねた。
「そりゃ、嫌だよ?でも、だからって俺の気持ちは変わらないしね」
……そうだ。
調子に乗って顔を出した欲に、根本的な気持ちが隠れてしまっていたけれど、何も変わらない。
結局、どうしたって俺はみちるちゃんが好きなんだ。
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