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「“そんな事”じゃないよ。みちるちゃんがしてくれる話は、俺にとってはどれも特別。……それなのに、俺は逃げたんだ。話の続きを聞くのが怖くて」
俯いて唇を噛む俺に、みちるちゃんはいつもの調子で「馬鹿ね」と言った。
盗み見るように視線を上げれば、その先に居る彼女は優しく微笑んでいた。
「振られた女の子の傷心話を蒸し返そうとするなんて、ヒドイ男ね」
責めるような言葉に反して、声色は穏やかでクスクスと微笑が混じるから、反応に困ってしまう。
「……ごめん」
視線を落として弱々しく謝ると、みちるちゃんは軽やかに体を翻して背を向けた。
「近くに公園があるの。少し歩かない?」
みちるちゃんはそう言うと、答えも待たずに歩き始めたから、慌てて後を追った。
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