14261人が本棚に入れています
本棚に追加
「触発されちゃったじゃない」
「……え」
荒っぽく投げられた言葉には思いがけず角がなくて、慌てて見張った目を上げ、みちるちゃんの表情を探った。
その口の端にはうっすらと笑みが浮かんでいる。
「ただ単純に、嬉しかったから。右京が、私を好きだって……そう言ってくれたこと。宇佐美も、せめてそんな風に思ってくれるかなって、伝えたくなったの」
俺の気持ちを嬉しいと、そう思ってくれたことが嬉しくて堪らない筈なのに。
何でだろう。
胸が苦しくて上手く笑えない。
「もしかしたら上手くいくかも……なんて期待も、本当はかなりしてたんだけどね」
振り返ったみちるちゃんは、繕うことなくそう言って、自嘲するように笑ってみせる。
返す言葉に詰まっているうちに、小さな公園に辿り着いた。
すっかり日も暮れて薄暗くなったそこは人気がなく、遊具が寂しそうに佇んでいる。
みちるちゃんはブランコの方へゆっくりと足を進めると、錆び付いた鎖を握り締めた。
涼しげな音を立て、ブランコはぎこちなく揺れる。
最初のコメントを投稿しよう!