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「……馬鹿」
俺の心情を悟ったのか、みちるちゃんは呆れたように笑い、いつもの一言で一蹴した。
「でも、ありがとう」
そう付け加え、照れ臭そうに俯く彼女の姿に目を細めてから、隣のブランコに手を伸ばす。
「右京」
鎖が騒がしく軋む音に掻き消されてしまいそうな、小さな呼び掛け。
その声の方に目を向ければ、みちるちゃんの真摯な瞳があった。
「ありがとう」
改まって言うみちるちゃんに、困惑しながら笑ってみせる。
「もうさっき聞いたよ」
「これは……さっきのとは、別」
少し強張った彼女の表情が、俺の薄っぺらな笑みを奪っていく。
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