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「そっ?俺は嬉しいけど、清吾は嫌な顔しそうだから黙っておいてね」
後ろを振り返り、人差し指を口元で立てて“内緒”と訴えると、宇佐美はハハッと笑いを返した。
そして、うっすらと残した笑顔を貼り付けたまま空を見つめる。
何か考え込んでいるのかと、その顔を覗き込もうとした時、宇佐美はゆっくりと体を起こした。
反射的に、後ずさって身構える。
「……去年、交通事故で」
不意打ちの告白に、二の句が告げられなくなる。
……俺は、バカだ。
真実を受け入れる覚悟も出来ないまま、軽い気持ちで追及してしまった自分を責める。
こんな答えが予測出来なかった訳じゃないのに。
「へー」
無表情を貫いて波立つ心を隠せば、そんな薄情にもとれる答えになってしまった。
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