繋ぐもの

6/31
前へ
/263ページ
次へ
「そっ?俺は嬉しいけど、清吾は嫌な顔しそうだから黙っておいてね」 後ろを振り返り、人差し指を口元で立てて“内緒”と訴えると、宇佐美はハハッと笑いを返した。 そして、うっすらと残した笑顔を貼り付けたまま空を見つめる。 何か考え込んでいるのかと、その顔を覗き込もうとした時、宇佐美はゆっくりと体を起こした。 反射的に、後ずさって身構える。 「……去年、交通事故で」 不意打ちの告白に、二の句が告げられなくなる。 ……俺は、バカだ。 真実を受け入れる覚悟も出来ないまま、軽い気持ちで追及してしまった自分を責める。 こんな答えが予測出来なかった訳じゃないのに。 「へー」 無表情を貫いて波立つ心を隠せば、そんな薄情にもとれる答えになってしまった。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14261人が本棚に入れています
本棚に追加