不機嫌なあの子

15/29

14263人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
「あれでしょ、サイッテー……」 「好き」 なんとなく重苦しい空気を取り払うべく、努めて明るく放った言葉は、短いくせにずっしりとのし掛かるその言葉に、捻り潰されて消えてしまった。   「私は……他の子たちみたいに、遊びと割り切って右京と居るんじゃない、よ?」 俺の心を取り込もうと、上目遣いの強かな瞳が俺を見つめる。 ……しまった。 こうなる事だけは避けていたつもりだったのに。 「気付かなかったって顔してる」 どこか勝ち誇ったように目を細め、緩やかな弧を描く口角だけが視界の中で揺れている。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14263人が本棚に入れています
本棚に追加