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「歩道を歩いていた俺たちに突っ込んできて」
……“俺たち”。
様々な事柄が繋がって、納得出来ずにいたものが、すとんとすんなり心に落ちた。
「気が付いたら、病院のベッドの上でした」
苦しそうに過去をなぞる宇佐美を見て、「もういい」とその口を塞いでしまいたかった。
でも、打ち明ける決意はきっと簡単なものではないから、俺は黙って聞くことを決めた。
「一緒に居た筈の彼女はどこにも居なくて。やっと会えたのは退院後、彼女の家で……俺が撮った、幸せそうに笑う彼女の……遺影だった」
切り裂かれるように胸が痛くて歯を食い縛り、固く目を瞑る。
今、こうして淡々と話している宇佐美が隠しながら抱える痛みは、ましてや当時の痛みは……
俺には到底計り知れない。
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