14261人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの日、あの時、あの場所に居なければ。時間が経っても、消えないんです。あの苦しみも、痛みも、後悔も、全部刻み込まれてる。彼女の未来は絶たれたのに、俺にだけは残っているなんて……。俺だけのうのうと幸せに生きるなんて」
淡々と話すその声に、やるせなさと怒りが灯っている。
あぁ、宇佐美は捕らわれているんだ。
彼女を失った悲しみに。
宇佐美はずっと、こうして自分を責めてきたんだろうか。
自分だけ前には進めないと、自分の傷が癒えていくのを許さずに、本当は治っている足を動かないと言い聞かせて。
「それでも、宇佐美は生きてるんだよ。前に進まなくちゃいけないんだ」
無神経な言葉に聞こえるかもしれない。
だけど、気付いて欲しい。
どんなに心身の傷が癒えても、こればかりは時間は解決してくれない。
「宇佐美が受け入れるしかないんだよ。受け入れて、生きていく覚悟をしなくちゃ」
最初のコメントを投稿しよう!