繋ぐもの

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「ていうか僕、君を励ましに来たんじゃなかったんだった!あんなに可愛い子に惚れられて振るなんて、どんな馬鹿なんだって詰りに来たのに」 へらっと歯を見せ、いたずらっぽく笑って言うと、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。 となると、恐らくもうすぐ、みちるちゃんがここへ来る。 そう思うと、もう少しここに留まっていたいような、早く立ち去りたいような、複雑な気持ちになった。 「……とにかく、覚えておいて。俺はみちるちゃんに笑っていて欲しい。それが出来るのは、悔しいけど宇佐美だと思ってる。ただ……もうひとつ、願いが増えた。宇佐美、お前にも、早く心の底から笑って欲しいよ」 彼女の幸せの先に居るのが宇佐美なら、せめて俺は、宇佐美と彼女を繋ぐものになりたかった。 二人が手を繋いで笑い合う姿を見守る覚悟でここへ来た。 付き合えよ、ってけしかけるつもりだった。 だけど、宇佐美の根深い傷を知ってしまった以上、さすがにそれは出来なかったけれど。  
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