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「ねぇ、右京。呼んでくれる?私の、名前……」
壊れたフィルターを通したそれは、まるでパラパラ漫画みたいに、歪に訴えかけてくる。
俺はなんだか可笑しくなって、ふっと力無い微笑を漏らした。
「わた……」
それを肯定だと思ったのだろうか。
尚も続こうとする唇を、無意識に指先で塞いだ。
「必要ないよ」
にっこりと笑って見せると、塞いだ唇は戸惑ったように震えた。
「興味、ないから。今も、これから先も……。知る必要ない」
きっぱりそう言い切ると、よろめきながら後退したその人の大きく見開いた目には、怒りと悲しみが揺らめいていた。
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