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「……はぐれると、いけないから」
「う、うん」
照れ臭さを紛らすように落とされた言い訳。
何度か宙をさ迷う手は、まだその手を取ることを躊躇っている。
かつてはもっとスマート且つ自然に出来た筈なのに、相手がみちるちゃんだと言うだけで緊張して、思うように体が動かない。
俺ってば、ダサ……
情けない程純情過ぎる自分にうんざりしていると、ステージの方から拍手が沸き起こった。
ショーが始まった事を知らせるそれに、2人して、しまったという顔を見合わせる。
「急ごう」
そう言うと、さっきまでの緊張と躊躇いが嘘のように、ごくごく自然にその手を取って走っていた。
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