ラストデート

11/24
前へ
/263ページ
次へ
「十分だよ。それに俺、唐揚げ大好きっ!」 もうひとつ唐揚げをつまみ上げ、ニカッと笑ってみせると、みちるちゃんは嬉しそうに目を細めた。 「だけどお弁当って、準備大変だよね。朝早かったんじゃない?」 「大丈夫よ。楽しみで、早く目が覚めちゃったの」 さらりとみちるちゃんの口から出た言葉に、ドキッと胸がなる。 社交辞令、社交辞令。 楽しみなのは水族館であって、俺とのデートじゃない。 都合よく解釈して、勘違いしそうになる自分に、そう唱えて歯止めをかける。 「そっか。でも、ありがとう」 「……どういたしまして」 照れ隠しの棒読みな返事にさえ、愛しさは増していく。 最初で最後のデート。 これで追いかけるのは終わりにしよう、って…… 諦めようって決めたのに、ちょっとした彼女の一挙一動で、その決心は簡単にぐらぐらと揺れる。 情けないったらありゃしない。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14261人が本棚に入れています
本棚に追加