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「十分だよ。それに俺、唐揚げ大好きっ!」
もうひとつ唐揚げをつまみ上げ、ニカッと笑ってみせると、みちるちゃんは嬉しそうに目を細めた。
「だけどお弁当って、準備大変だよね。朝早かったんじゃない?」
「大丈夫よ。楽しみで、早く目が覚めちゃったの」
さらりとみちるちゃんの口から出た言葉に、ドキッと胸がなる。
社交辞令、社交辞令。
楽しみなのは水族館であって、俺とのデートじゃない。
都合よく解釈して、勘違いしそうになる自分に、そう唱えて歯止めをかける。
「そっか。でも、ありがとう」
「……どういたしまして」
照れ隠しの棒読みな返事にさえ、愛しさは増していく。
最初で最後のデート。
これで追いかけるのは終わりにしよう、って……
諦めようって決めたのに、ちょっとした彼女の一挙一動で、その決心は簡単にぐらぐらと揺れる。
情けないったらありゃしない。
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