ラストデート

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それにしても、ただでさえ手間の掛かるお弁当を、わざわざ朝から作ってきてくれたのだ。 しかも、大きな荷物になって重たかっただろうに。 改めて思い返して、申し訳なく感じる反面、もう一度喜びを噛み締めてる俺はきっと、いつも以上にだらしない顔をしているだろう。   「楽して美味しい思いばっかりしてたら、怠け者になっちゃうからさ。ちょっとくらい扱き使ってよ」 緩みきった顔を隠すようにニッと笑ってみせる。 だけど、みちるちゃんは案の定、「でも……」と渋る。 「そういうの嫌いなの」と朝から散々突っぱねられたから分かっていたけれど、懲りずに俺は言葉を付け足した。 「それで、空いた手で、迷子にならないように……手、繋いでくれる?」 それを受けて、面食らった顔を見せたみちるちゃんを、懇願するように覗き込めば、「仕方ないわね」と言うような、了承の笑みを織り混ぜた溜め息が落ちた。  
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