ラストデート

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並んで歩いていた筈が、みちるちゃんの歩調は徐々にスピードが落ちていった。 足を止めて振り返れば、数歩後ろで立ち止まった彼女が俺をじっと見据えている。 「……さよならみたく、聞こえた」 眉根を寄せて、どこか苦しげに、みちるちゃんは呟く。 それでも、思わず逸らしたくなるくらい、まっすぐな芯のある眼差しは変わらない。 「そんなこと……」 空々しく笑って誤魔化してみたけれど、それは段々と尻すぼみになって、夜の闇に溶けて消えた。 「ないこともない、か。……そうだね、“さよなら”だよ」 そう言ってやっと、俺を映す不機嫌そうな目が歪んだ。  
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