ラストデート

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「言ったでしょ、これが最後だって。もう、みちるちゃんの事を待ち伏せたり、困らせたりしないから……安心して」 努めて、笑顔で言う。 寂しくて、切なくて、心がちぎれそうだ。 こんなに誰かを好きになる日が来るなんて、夢にも思わなかった。 一緒に過ごす、なんでもない一瞬一瞬がこんなにも特別だと思えるなんて知らなかった。 誰かを欲しいと強く願ったのも、手に入らないもどかしさを知ったのも、初めてで。 出来る事ならずっと傍に居たいけれど、何も望まないでいる自信はなくて。 だから、この辺りで潔く身を引かなくちゃ。 「人の事振り回すだけ振り回しておいて、勝手な事言うのね」 無表情な声は棘のように鋭利で、俺の心のど真ん中を刺す。 だけど、みちるちゃんの言う通りだ。 自分の気持ちを散々振りかざしておいて、逃げるんだから。 それでも、みちるちゃん。 俺にはこうする他にいい方法が思い浮かばない。 諦めると決めた今でも想いは募るのに、ただ笑って見ていられる程出来た男じゃないって、知ってるだろ? 君の幸せを願っているのに、誰かの隣で笑う君の幸せは、許せないんだ。  
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