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居心地の悪い、重い沈黙を、メールを打つ音が埋めていく。
カチカチ。
カチ、カチカチ……
押し潰されてしまいそうだ。
積もっていく、聞き慣れている筈のその音と、嫉妬と、切なさで。
「みちる!」
しばらくして、みちるちゃんを呼ぶ声と共に宇佐美が現れた。
ここまで慌てて走ってきたのか、息を切らし、その額には汗も滲ませて。
そして、ずっと俯いたまま、こちらを見ようともしなかったみちるちゃんの体を、何の躊躇いもなく、いとも簡単に抱き寄せた。
その様をぼんやりと映しながら、ヒーローみたいでかっこいいな、なんて染々と思う。
敵う筈がない。
みちるちゃんはこんなにも当たり前に、宇佐美を受け入れるのに。
初めから分かっていたのに。
傷付いてる俺は、馬鹿だ。
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