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恐らく、俺の心は欠陥品だ。
感情が欠如している。
さっきみたいに誰かを傷付けても、ちっとも胸は痛まない。
求められるような恋や愛なんてのも、ただ厄介なだけ。
まるで、渇ききってひび割れてしまった器みたいだ。
感情が心を潤すものだとしたら、潤いに満たされるのはほんの一瞬で、すぐにそれはひびをすり抜けて無くなってしまう。
だから、響かない。
残らない。
……何も。
あるのは虚無感だけ。
せめてそれを紛らしたくて、俺はこんなにもくだらない人間に成り下がる。
『右京は相手が自分に惚れたら、そそくさと逃げるの。必要以上に踏み込まれるのを拒んで、初めから何もなかったみたいに近付こうとしない』
さっき言われた言葉が脳裏に蘇って、くっと笑う。
確かにその通りだと思って。
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