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「おかえり」
家に帰り着き、玄関のドアを開けると、まるで待ち構えていたみたいに、珍しく清吾が出迎えた。
「……ただいま」
いつもならここで、拒まれてでも清吾の胸に飛び込んで行くのだけど、傷心の俺に、さすがにそんな元気は残っていない。
「どうだった、みちるの唐揚げ」
横を通り過ぎようとする俺に投げられた、からかうような清吾の問いに、ぴたりと足を止める。
「みちるに聞かれたんだ。右京の好きな食べ物は何かって。だから……」
「美味しかったよ、すごく」
清吾の言葉を遮って言うと、俺はそそくさと自分の部屋へ向かった。
とてもじゃないけど、今はまだ「へぇ、そうなんだ」って平然と笑って彼女の話を聞けそうになくて。
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