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『ウザッ。死ねば?』
忌々しげに蔑むその一言が、全てのきっかけ。
初めはただ、興味本位で近付いた。
笑いかけても、冷たく睨み返す彼女に。
だって、そんな事は初めてだったから。
だけど、知ってしまった。
彼女がたった1人に向ける、とびっきりの笑顔。
その笑顔が見たくて追い掛けて、気付けば夢中になっていた。
『馬っ鹿じゃないの』
冷たく放たれる言葉の裏に、優しさを隠している。
本当は一途で、繊細な普通の女の子。
彼女が特別なわけじゃない。
俺の“特別”がみちるちゃんだっただけ。
『右京』
初めて名前を呼ばれた時には、胸が震えて。
『……馬鹿』
優しい目で、声で、呆れたように微笑む彼女に胸が熱くなった。
知らず知らずのうちに漏れる熱い溜息を、押し込めるように両手で口元を覆う。
大きく息を吸って、滲む世界にふたをする。
それでも光は射すように、君はまぶたの裏に居て、俺のすべてを満たしていく。
カラフルに。
俺はほんの数ヶ月で、一生分の恋をした。
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