不機嫌な瞳に恋してる。

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  冬は嫌いだ。 なんだか、世界が色褪せて見えて、寂しくなる。 ついこないだまで、ずっとそんな風に見えていた筈なのに、と自分自身に笑う。 空を見上げれば、吐く息が白く染まって、澄んだ空気に溶けていく。 寒さで鼻がツンとする、この瞬間は結構好きだ。 冷たい風が唸りながらぶつかってくると、俺は身震いをしてから肩を竦め、背中を丸めてまた歩き出した。 あっという間に日々は過ぎ、いつの間にか年が明け、センター試験がもう目前に迫っている。 あれから、みちるちゃんとは会っていない。 自ら動かなければ、会う機会など殆どないと既に学習済みだし、それ以前にどうしてるかなって、気にはなっても、足が竦んで動けなかった。 思いの外、臆病な自分に呆れてしまう。 紛らすように受験勉強に没頭して、なんとかやり過ごす毎日。 何の為の受験勉強なんだか、目的がずれているけれど。 だけどそんな日々も、もうすぐ終わる。  
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