不機嫌な瞳に恋してる。

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  「右京」 とぼとぼと歩いていると、聞き間違える筈のない声に呼ばれ、驚いて顔を上げた。 会いたいと思い過ぎて、無意識のうちにみちるちゃんの家まで押し掛けてしまったのかと、慌てて辺りを見回して、ここがどこかを確かめる。 けれど、そこにあるのはやっぱり見慣れた近所の景色と自分の家だ。 「挙動不審」 未だ混乱する俺の視界に割って入ってきたみちるちゃんの冷たい眼差しが俺をたしなめる。 懐かしいこの感覚。 夢だけど、夢じゃない。 「あ。えっと、その……、久しぶり」 なんて声を掛けたらいいのか分からない上に、がちがちに緊張してしまい、目すら合わせられずに当たり障りのない言葉を投げる。  
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