不機嫌な瞳に恋してる。

5/28
前へ
/263ページ
次へ
「こんな寒い中、ずっと?」 「まさか。さっき来たところ」 そう笑ってみせるみちるちゃんの鼻の頭は赤くなっているし、体だって冷えきっている。 さっき来たところじゃない事くらい、明白だ。 「……バカだな」 いつものみちるちゃんの台詞を奪うと、みちるちゃんは少し不機嫌になった。 その姿に目を細めながら、自分の首に巻き付けていたマフラーを外して、みちるちゃんの首にぐるぐる巻きにする。 「どこかお店に入って温かいものでも飲んで暖まろう。このままじゃ風邪引くよ」 手を取って引きたい衝動を抑えながら、くるりと方向転換をする。 「別にここでいいのに。なんなら、右京の家だって……」 俺の必死の抑制に気付いてもいないみちるちゃんの呟きを聞き付けて、勢いよく振り返る。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14261人が本棚に入れています
本棚に追加