14261人が本棚に入れています
本棚に追加
嬉しそうに、恥ずかしそうに、はにかむその笑顔には見覚えがある。
宇佐美に向けられて、俺には決して向けられなかった表情。
とくん、とくんと熱いものが胸を打つ。
俺の勘違い?
自意識過剰?
なんでもいいや。
その笑顔をずっと、真正面から見たかった。
「私、右京のことが好きみたい」
ぶわっと、足元から何かが湧き出るみたいな、そんな感覚だった。
心臓は早鐘を打って、体は一気に上気する。
頭の中は真っ白。
これは、夢?
刺すような寒さが見せる幻覚?
なんでもいい。
今、みちるちゃんを抱き締めたい。
のに、体は動かない。
ダサいくらい緊張してて、少し手が震えてる。
「今度は私が右京を追い掛けるから、待ってて」
晴れ晴れとした顔でみちるちゃんはそう言うと、俺の答えを待たずして走り去ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!