不機嫌な瞳に恋してる。

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  「右京、入るよ」 ノックと共に聞こえてきた声で目を覚ました。 まとわりつく汗が気だるさを助長する。 ゆっくりと首を捻れば、清吾が立っていた。 「熱は?……まだあるな」 言うが早いか、額を探ると、清吾は冷却シートを乱暴に額に押し付けた。 「母さんが食べろって、五目粥。右京、好きだろ」 小さな土鍋から、まだ湯気の立つお粥を茶碗に掬うと、清吾はそれを差し出して言った。 のっそりと体を起こし、受け取ると、懐かしくて美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。 「……風邪、移るよ?」 用も済んで部屋に戻るのかと思いきや、清吾は椅子に腰掛けて雑誌を読み始めるから、不思議に思って声を掛けた。  
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