不機嫌な瞳に恋してる。

13/28
前へ
/263ページ
次へ
「マスクしてるから大丈夫。この雑誌読んだら部屋に戻るし。何かあったら声掛けて。気が向いたら聞いてあげてもいい」 雑誌なら、自分の部屋で読めばいいのに。 素直じゃないな、と目を細めるけれど、「ありがとう」と言えない俺も同じだ。 お粥を一口、口へ運ぶ。 レンジで温めた作り置きとは違う、出来立ての香りと味。 小さい頃、熱を出したら必ず母さんが作ってくれた五目粥は、特別美味しく感じて大好きだった。 母さんも清吾もちゃんと覚えていてくれたんだ。 そう言えば、清吾は俺が眠るまで「大丈夫?」と心配そうに傍についてくれていたっけ。 あの頃は可愛かったのになぁ。 昔を思い出して、じんと胸が熱くなる。 確かに俺も含めてみんな、あの頃に比べたら変わってしまった。 取り巻く状況や姿形は常に変化していくけれど、きっと本質的なものは何も変わらない。 時間が流れるって多分、そういう事だ。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14261人が本棚に入れています
本棚に追加