不機嫌な瞳に恋してる。

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「清吾」 徐々に冷めていくお粥をぼんやりと映しながら呟く。 答えの代わりに、はらりとページの捲れる掠れた音がした。 「俺、みちるちゃんが好きなんだ」 「何を今更」 清吾は馬鹿にしたように鼻先で笑う。   「俺が居なくなってもさ、悪い虫がつかないようにしっかり見張っておいてよね」 無防備で危なっかしいけど、可愛いからなぁ、と漏れそうになるのを心の中で留めておく。 「何それ。……居なくなるって」 小さく笑って、それから少し責めるように清吾は尋ねた。 「俺、県外の大学に進学する」 この家を、この町を出ていく。 自分の進路を清吾に明かしたのはこれが初めてで。 空気が張り詰めたものに変わった事で、清吾の驚きと動揺を読み取る事ができた。  
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