不機嫌な瞳に恋してる。

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清吾が驚くのも無理はない。 これまで、俺には何の目標もなくて。 とりあえず大学に行っておけばいいか、って軽い気持ちで過ごしてきたから。 だけど、みちるちゃんに恋をして、自分自身と向き合うきっかけが出来て、進みたい道が見えたんだ。 まだ小さな光だけど、確かに俺の前に、導くように射している。 「母さんのことも、頼む」 亀裂が入った両親の関係。 そう遠くない未来に、2人は別々の道を歩む事を決めるだろうと、俺たちは気付いていた。 気付いているのに、清吾に全てを託すなんて、ズルいと分かっているけれど…… 「辛気臭い事は、受かってから言えば」 そんな俺の後ろめたさを取り払うように、清吾はわざと冷たく言い放った。 そのぶっきらぼうな優しさに、強張っていた表情はふっと綻んで、「そうだね」と相槌を打つ。   「母さんには俺がついてるから、心配しなくていい。せいぜい、受験頑張りな」 清吾のエールが胸に染みる。 うっすらと視界が滲むのを紛らすように大きく頭を振って、お粥を口に掻き込んだ。  
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