不機嫌なあの子

21/29

14263人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
  「げっ!まだ居る!!」 迷惑そうな声が上がって、馳せていた思考を取り戻した。 項垂れていた頭を上げ、目の前に立つ人物に焦点を合わせる。 そこに居たのはさっき追い掛け損ねた、やっぱり不機嫌そうな彼女だ。 「そこ、退いてくれない」 彼女の緩やかに尖った顎が背後にある、屋上へと続くドアを指した。 「屋上は立ち入り禁止だよ」 そう示唆しながら体を横へずらし、塞いでいたドアへの道をあける。 すると彼女は大きく1歩、跳ねるように踏み出して俺の隣に立つ。 そして生意気な笑みを湛えた目を細め、見下ろして言った。 「案外つまらない事言うのね」 「!」 馬鹿にしたような言葉に面食らっているうちに、彼女は捻ったドアノブに体重を掛け、重たいその鉄扉を押し開けた。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14263人が本棚に入れています
本棚に追加