不機嫌な瞳に恋してる。

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  相変わらず体力のない俺は、息を切らしながら屋上に向かって階段を駆け上がっていた。 人気のなくなった学校はしんと静まり返っていて、自分の荒い息遣いとパタパタと間の抜けたスリッパの音だけが響く。 いよいよ屋上に近付いてきたところで歩を緩め、踏みしめるように一歩一歩階段を上った。 そしてようやく視界が開けて、屋上の前の踊り場へと辿り着く。 みちるちゃんに恋をしたこの場所に、最後どうしても来たかった。 目を閉じて、息を吸って。 例えここに彼女が居なくても、その気配を、思い出を感じられて、胸が熱くなる。 ゆっくりと瞼を上げて、屋上の扉が視界に入ると、吸い寄せられるようにそちらへ足を向けた。  
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