不機嫌な瞳に恋してる。

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ギィッと錆び付いた重々しい音が伸びる。 そうして生まれた隙間から、一気に冷ややかな風がぶつかってきて、思わず目を閉じた。 寒さに身を震わせながら一歩を踏み込む。 その先に、ここにある筈のない背中を見つけて、目を疑った。 「みちる、ちゃん?」 フェンス越しにグラウンドを見下ろしていた彼女は、俺がここへ来るのを分かっていたみたいに振り返って微笑んだ。 「良かった。もう帰っちゃったかと思った」 そう言ってみちるちゃんは、驚いて立ち尽くす俺の元へ歩みを進める。 「なんでここに……?夢?幻覚?」 大きく見張った目で尋ねれば、みちるちゃんは目を細めて、いつもの調子で「馬鹿ね」と言った。  
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