不機嫌な瞳に恋してる。

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「本物に決まってるでしょ。卒業、おめでとう」 目の前で立ち止まり、少し照れ臭そうに言うみちるちゃんに、まだぼんやりと覚束ない意識で「ありがとう」とだけ返す。 だって、こんな展開、想像も期待もしていなかったから。 「それにしても……ひどい有り様ね」 俺の身なりに視線を這わせて、みちるちゃんは眉をひそめた。 見事に全てボタンを奪われた学ランは、本来の役目を果たしておらず、だらしなく口を開いている。 「今でもまだボタンを貰うとか、あるんだね」と苦笑混じりに返す。 「女の子に声掛けられる事がなくなったと思ってたけど……、まだまだ僕も捨てたもんじゃないねぇ」 緊張して、何を話したらいいか分からなくて適当におどけて言ってみせる。  
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