不機嫌な瞳に恋してる。

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  ゆったりと白い雲が流れる、青く澄んだ空。 その下で、整然と並んだ桜の花びらが風に舞って、世界を淡いピンク色に染める。 花壇ではたくさんの花が咲き誇って、春の色を織り成している。 色鮮やかでカラフルな世界。 その眩さに目を細めた。 「桐島」 後ろから声を掛けられ、振り返る。 「ぼーっとしてないで、もっと愛想良く笑えよ。お前目当てで寄ってくる女の子が多いんだから」 大学生生活、3年目の春。 入学式を終えた講堂前には、新入生とサークル勧誘の人たちで賑わっている。 そして俺も、勧誘に借り出されているというわけだ。 「勘弁してよ。俺、バイト明けで寝不足なんだから」 ほんの数時間前まで働いていて、くたくたで眠気もピーク。 そんな俺の肩に、サークル仲間は親しげに腕を回した。  
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