不機嫌な瞳に恋してる。

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「夢?幻覚?」 しばらく走り、人気のない校舎の影までやって来ると、俺たちは足を止めた。 そして、思ったままを声にすると、みちるちゃんは呆れたようにふっと険しい顔を崩した。 「2年前とおんなじこと、言ってる。本物に決まってるでしょ」 そう言えば、と苦笑する。 「……入学、おめでとう」 「ありがと」 だけど2年前と違うのは、“おめでとう”を贈るのが俺だということ。 そしてこれはあの日のような、別離じゃない。 「会いたかった、ずっと……」 その喜びを噛み締めながら、消え入るような声で呟く。  
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