不機嫌な瞳に恋してる。

「……それで、合コンって？」

もうすっかり忘れ去っていた話を掘り返されて固まる。
さっきまでの甘い空気は一変して、張り付けたような笑顔がただただ怖い。

「えっ、と……人数合わせに呼ばれて」
「じゃあ、お持ち帰りって？」

すかさず突っ込んで尋ねるみちるちゃん。

「たまたま、帰る方向が同じだっただけだよ」
「ふーん」

まだ納得がいかないらしく、不機嫌な瞳が俺を睨む。
だけど、出会った時とは違う感情がその中に潜んでいる事を、俺はもう、知ってしまった。

「みちるちゃんてば、可愛い」

つい緩む口元を隠すように、不意打ちで唇を奪う。
するとみちるちゃんは、耳まで真っ赤に染めた、説得力のない顔で俺を睨んだ。

愛しくて仕方ないその瞳。
俺はきっと、ずっと……
君のその、不機嫌な瞳に恋してる。

完