番外編

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「プロポーズ!?」 口を揃えて驚くのは、清吾と宇佐美だ。 何故か二人とも、みちるちゃんに連れ立つように地元を離れ、清吾は学部が違うため、校舎こそ別だけれど同じ大学に、宇佐美は俺たちの大学の近くの専門学校にそれぞれ進学した。 相変わらず三人は仲が良くて、その関係には未だに妬けてしまう。 喫茶店でアルバイトをしている宇佐美の元に集まるのが習慣になっていて、今日もしかり、だ。 「別に、今すぐ結婚ってわけじゃないけどね?みちるちゃんもまだ学生だし。ただ……一応内定も貰ったし、意思表示として、さ」 気恥ずかしさを咳払いで誤魔化す。 「急いては事を仕損じるって言葉、知ってる?」 「不吉なこと、言わないでくれる?」 と、すかさず清吾が嫌みったらしいことを言うから、ぎろりと睨み付ける。 就職という節目を機に決意したプロポーズ。 焦っていると言われれば、そうなのかもしれない。 これから再び、俺たちは全く別の環境で時間を過ごすことになる。 その不安を、少しでも晴らしたいという、自己満足でしかない。 それでも、この先の人生を一緒に歩んでいくのは、みちるちゃんしか居ないと思っているから。 このプロポーズは、単なる思い付きなんかじゃなく、並々ならぬ決意だ。
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