番外編

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「ちゃんと幸せに出来るんでしょうね?」 いつになく真剣な表情で宇佐美が尋ねるから、ごくりと息を飲む。 実は、ずっと前から確めたかったことがあった。 「宇佐美って、その……もしかして、みちるちゃんのこと……?」 「散々人のこと焚き付けておいて、今更なに言ってるんですか。嫌がらせとしか思えないですけど」 ずっと不確かだった、宇佐美の心の在処。 遠回しな答えから察するに、やっぱりそれはみちるちゃんに向かっていたのだと確信する。 そして、その背中を押したのは紛れもなく俺で。 「ごめん……」 「謝られるとイラッとします。殴ってもいいですか?」 作り笑顔が得意の筈の宇佐美が、少しも笑うことなく冷やかな目で俺を見下ろすから、本気なのだと理解する。 「ぼ、暴力反対」 「一度くらい殴らせてやれば」 ずっと俺たちのやり取りを静観していた清吾が、軽いノリでそう煽ると、「じゃあ……」と宇佐美は、どこからともなく一升瓶を持ち出してきた。 さすがに本気で身の危険を感じて、背筋が凍る。
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