14263人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
「宇佐美、起きなっ!」
彼女はぴたりと立ち止まったと思うと、貯水槽の建物の影を覗き込んで声を上げた。
「宇ー佐ー……美っ!!」
彼女は軽やかに跳ね上がると、スカートを翻し、白い太股を覗かせて、その影の向こうへ消えて行った。
と同時に、現状を全て把握させるような、ぐえっと苦しそうな声が聞こえてきた。
怖々と覗き込めば、案の定、彼女は寝そべる誰かの背中の上に跨がっていた。
「……ちょっと。重いから、早く下りて」
「なぁに、失礼しちゃう」
起き上がる事を諦めた下敷きの人が、溜め息混じりにそう促すと、彼女は怒り口調でそう返した。
けれども、そんな彼女の表情はどこか楽しそうで。
なんとなく、胸がチクリと微かに痛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!