不機嫌なあの子

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「宇佐美、起きなっ!」 彼女はぴたりと立ち止まったと思うと、貯水槽の建物の影を覗き込んで声を上げた。 「宇ー佐ー……美っ!!」 彼女は軽やかに跳ね上がると、スカートを翻し、白い太股を覗かせて、その影の向こうへ消えて行った。 と同時に、現状を全て把握させるような、ぐえっと苦しそうな声が聞こえてきた。 怖々と覗き込めば、案の定、彼女は寝そべる誰かの背中の上に跨がっていた。 「……ちょっと。重いから、早く下りて」 「なぁに、失礼しちゃう」 起き上がる事を諦めた下敷きの人が、溜め息混じりにそう促すと、彼女は怒り口調でそう返した。 けれども、そんな彼女の表情はどこか楽しそうで。 なんとなく、胸がチクリと微かに痛んだ。  
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