番外編

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「ちょっ、まっ……!!さすがに凶器はなしでしょ!?」 「だって、手で殴ったら痛いでしょう」 「右京なら多分大丈夫。むしろ馬鹿が治っていいかもしれない」 逃げ腰でそう声を上げる俺に、二人は冷たい笑顔を向ける。 この二人の結託は、本当に恐ろしい。 普段に増して、本気と冗談の境界線が分からない。 「……で?ちゃんと幸せにするの?」 「も、もちろん」 「泣かせたりしない?」 「しない」 「絶対?」 「絶対。……とは言い切れないけど、努力する。みちるちゃんがこの先一人で悩んだり、泣いたりすることがないように」 質問に込められた宇佐美の想いに応えるように、強く頷く。 俺だってそんなこと、望んではいないから。 「……約束ですよ?」 そう念を押す宇佐美に、もう一度深く頷いてみせる。 すると宇佐美は、掲げていた一升瓶を静かに下ろした。 それにしても、まるでみちるちゃんのご両親に結婚の許しを頂きに行く予行演習の気分だ。 さすがに、一升瓶は出してこないだろうけれど。
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