番外編

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「ま、いいんじゃない。せいぜい頑張って」 興味なさげに、清吾は呟く。 その向かいで、 「結婚かぁ」 と、宇佐美が染々漏らす。 そうして、笑顔を俺に向けた。 人をからかう時の、極上な作り笑顔。 「俺、好きだったな。『卒業』って映画」 「お願いだから、ホントやめてね。そういうたちの悪い冗談」 結婚式に花嫁を拐っていくとか。 考えるだけで堪らない。 みちるちゃんが、他の誰かの手を取るなんて。 そんなことを考えながらテーブルに崩れる俺に、宇佐美は愉快そうに笑った。 「心配しなくても、みちるは俺を選んだりしないよ。なんだかんだ言っても、右京さんのこと大好きだから、みちる」 その一言で、簡単に心は浮上する。 だらしなく頬が緩むのを感じながら、みちるちゃんへの意気込みを強くした。
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