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「名前、教えて」
そうせがむと、彼女は俺の真意を探るように目を細めた。
「それって、必要なこと?」
あたかも、知る必要などないと言うように。
笑ってしまう。
名前など知る必要ないと、さっきあの子を拒んだ俺が、彼女の名前を求めている。
そして今度は逆に俺の方が、同じように拒まれているのだから。
「……少なくとも、俺には」
すかさず彼女の華奢な手を取って、人質にする。
「教えてくれるまで離さない」
脅すような俺の言葉を受けて、彼女は忌々しげに俺を睨んだ。
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